ナトリウムの役目(血圧を調整する♪)

 

<クマ:自分の生い立ちを調べているクマムシ>

<Koby:一緒に調査している科学オタク>



Koby:血圧とナトリウムは深い関係があるということは、周知の事実のようじゃが、ふとその理屈が知りたくなった。

クマ:またまた、リスクコミュニケーションとはちょっと趣がちがうようですが。

Koby:いやいや違う。何でも知りたくなった時に、自分で納得できるまで調べることは、リスクコミュニケーションのアプローチそのものじゃ。

クマ:まぁ、いいでしょ。ところで、面白い話なの?

Koby:そうなんじゃ。放射線のリスクを調べると、生命の本質活動まで関係したように、ナトリウムのリスクも面白いぞ。

クマ:そこまで言われると、聞きたくなるな。

Koby:オーケイ。では、調査結果を説明しよう。  血圧は、心臓のポンプとしての拍出力と、血管(末梢血管も含む)の容器としての収縮度の積として表わすことができる。まぁ、測定は血圧計をつかって簡単にはかることができるがの。 心臓の拍出力は、体内水・Na量(これを体液量V-factorと言う)と心臓の収縮力により規定さる。心臓の収縮力はまぁ一定と言えるから(普通の人で)、心拍出力は体内の水・Na量によって決定されると考えてもよい。すなわち、体液量が多いと血圧も高くなるんじゃ。 この、体液量は、生命活動のまさしくバランスから決まる。すなわち、この図に示すように、

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(1). 細胞膜の浸透圧の維持:カリウム、ナトリウムなどのイオン濃度を調節し、細胞の大きさ、機能を維持する。浸透圧のバランスが崩れると細胞はその形態を維持できなく、破裂するかしぼんでしまう。

(2). 酸塩基平衡の調節:体内のpHを弱アリカリ性に維持し組織の正常に機能さる。体液のpHは一定値7.35〜7.45の弱アルカリ性に保たれており、この範囲を超えると体内の組織の活動に大きな支障が出る。

(3). 神経伝達に関与:神経細胞の外部のナトリウムイオンと内部のカリウムイオンの両者の働きにより電流が生じ、刺激が伝達される。また、同様の理屈で、筋肉収縮はナトリウムイオン、カリウムイオンの筋肉細胞への作用により開始される。

という具合に、生物の根源的なところで、ナトリウムは関係しているんじゃ。
この、細胞外液の代表が血液で、血液の全体のボリュームは、ナトリウム濃度が一定になるように調整されていると考えても良い。つまり、血液中のナトリウムが高くなるとその結果として、体液が増え、血圧上昇につながる訳じゃ。

クマ:ふ〜ん。そうなんだ。

Koby:次に、体液の誕生について調べると、このようなことが分かった。
つまり、原始生物が誕生した時の、外部環境であった、当時の海水塩分濃度が、われわれの体液の組成にもっとも近いということなんじゃ。
つまり、ナトリウムは、生命活動には無くてはならないそれはそれは重要なもので、陸に上がった生物は、いかにナトリウムを補充するかが、生死を分けるファクターにもなったのじゃ。

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食塩枯渇の条件は、恐らく動物の普通の生理的状態で、体内への水・Na確保の目的のために、種々の機能が発達したんじゃ。
この普通の生理的な範囲の食塩とは、原始時代の食塩摂取量からシュミレーションすると1日1g近傍と推定され、現代人、特に現在日本人の平均食塩摂取量は11〜12g/日と比べると、必要量の10倍以上であり、この異常に多いNa負荷が高血圧の主因であると言っても過言ではないようじゃ。
当然、体の機能として過剰食塩下に、それを排出する機能はあるが、非常に長い間の食塩枯渇の状態では、過剰食塩の排出機能がそれほど発達していないんじゃな。

一言でいうと、今まで必死で探さなければならなかった塩だから、味として体が欲する自然のしくみのなかで、簡単に塩を摂取できるようになったが、体の機能がそれに追いついていないということじゃ。

クマ:塩の意味が良く分かったよ。クマも摂りすぎには注意をしなくっちゃ。
(PS:クマクシの体液バランスが不明なので、クマのコメントはKobyに対する共感表現とご理解ください)



参考文献
減塩と高血圧(特に夜間高血圧)
東京都済生会中央病院 腎臓内科部長 栗山 哲

人体のしくみと働き(体液のしくみと働き)
http://plaza.umin.ac.jp/~histsite/fluidtxt.pdf