3.麻薬とランニングハイ (エンドルフィンとアナンダミド)
<クマ:色々なことを調べているクマムシ>
<Koby:一緒に調査している科学オタク>
Koby:今回は、心に作用する「毒」としてアヘンと大麻についての話じゃ。
クマ:アヘンはモルヒネとして、大麻はマリファナとして、その名もとどろく恐ろしい麻薬で、使用すれば中毒症状になり、やがては廃人にいたる、という禁断の言葉的な、危険なしろものの話?
Koby:そうじゃ。
クマ:なんか、聞くこと自体、犯罪者になりそうな雰囲気なんだけど、大丈夫?
Koby:心配しなさんな。これから話すのは、最近の科学者たちの研究成果で、特に脳内伝達物質の最新の研究成果じゃ。
クマ:ヨカッタ。
Koby:さて、本題に戻って、話を進めよう。まず、なんで、麻薬が脳内伝達物質の最新研究につながるのかというところからじゃ。 まず、その前にモルヒネとマリファナの作用について説明しよう。 モルヒネは、鎮痛、鎮静に働き、脳内ホルモンであるドーパミン遊離を促進させ、多幸感をもたらす、またマリファナは、多幸感と陶酔作用が特に強くモルヒネ同様鎮痛効果もある。 このように共通する多幸感と陶酔感をもたらす効果のため、昔から一種の薬として使用されてきたんじゃが、また中毒性が非常に強いので、非常に危険なのじゃ。
クマ:歴史でならったアヘン戦争も、そういう薬効と危険性からきてる訳ね。
Koby:そうじゃ。さて、この精神作用を科学的に解明しようと世界中の科学者が挑戦した。 まず、最初に解明されたのが、モルヒネじゃ。 科学者達は、動物の脳内にモルヒネ状物質がないか調査をして、1975年に、スコットランドとアメリカ合衆国の二つのグループにより発見され「脳内モルヒネ」を略し「体内で分泌されるモルヒネ」の意味からエンドルフィンと名づけた。
マリファナ状の脳内物質は、1992年、ヘブライ大学の研究室において、チェコの分析化学者とアメリカの分子薬理学者によって分離・構造決定が行われ、サンスクリット語のアーナンダー(至福を意味する)とアミドを合わせた「アナンダミド」と名付けられたのじゃ。
これらの、発見は非常に大きい意味を持っているんじゃ。なぜなら、動物の脳内には幸福感や陶酔感をもたらす物質があることが分かったからじゃ。そして、この脳内物質を人間の行動と結びつけて、いつどのような時に多く分泌されるか、が科学的に調査されることになる。
クマ:ヘェ〜。麻薬から、脳内物質の研究が進んだんだ。
Koby:その通り。考えてもみてくれ。 もともと、人間として幸福感とか陶酔感は、感情として理解されてきたんじゃが、それを体現可能な外部の化学物質があって始めて、それと同様物質を体内に探すしか手は無かったんじゃな。
さて、現在、大勢の科学者がその調査をしている。
見つかったのが早いエンドルフィンが、先行しているが、有名なところでは、「ランニング・ハイ」や「セックス」の時に感じる陶酔感や幸福感に大きく関係しているそうじゃ。
また、最近の研究では、脳内マリファナであるアナンダミドも「ランニング・ハイ」の時に多く分泌されていることが確認されている。
ある種の行動で、幸福感や陶酔感が体験できるということは、進化の過程で、その行動を取ることにより生存と繁殖の確率が高まるという点にあったはずで、神経学的な報酬となり繰り返しその行動を取ることを促すことにつながると考えている科学者もいる。
「セックス」の場合は説明せずとも理解できるだろう。
「ランニング・ハイ」については、その進化論的な検証が行われているところじゃそうじゃ。
クマ:人間にとって、走ることは、セックスとおなじくらい根源的なものだということか。
Koby:走ることというより、中程度ないしやや強度の有酸素運動が重要かもしれない。
つまり、これらの運動で生存と繁殖の確率が高まるというわけじゃ、つまりより「健康」になれるということだな。
クマ:麻薬の影響が実は、種の保存の法則にも関係する脳内物質の解明につながるとは、びっくりだよ。 「毒」の効能を、よくよく突き詰めれると、生命の奥深い真実につながる良い例だね。 ただ、「ランニング・ハイ」までに到達するまで、10分程度の運動ができるか、できないかが、継続のポイントかも。クマも、頑張って運動しなくっちゃ。 とても奥の深い話でした。ありがとう。
参考文献:
ウイキペディア ja.wikipedia.org/wiki/モルヒネ、マリファナ、エンドルフィン、アナンダミド
"The Reality of the "Runner's High"". UPMC Sports Medicine. University of Pittsburgh Schools of the Health Sciences. Retrieved 2008-10-15.
"'Sexercise' yourself into shape". Health. BBC News. 2006-02-11. Retrieved 2008-10-15.
和久敬蔵、内因性カンナビノイド受容体リガンド―アナンダミドと2−アラキドノイルグリセロール、薬学雑誌126(2)、p67-81(2006)
ナショナルジオグラフィックニュース/ランナーズハイは進化の適応 http://www.nationalgeographic.co.jp/news/
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