リスク比較の真実/基準値とガン化のリスク

 

<クマ:自分の生い立ちを調べているクマムシ>

<Koby:一緒に調査している科学オタク>



Koby:リスクコミュニケーションに当たって、リスクの大小を客観的に理解することは、大変重要であるこうは言うまでもない。 ということで、今回はリスクを化学物質の環境基準値のレベルと、普通の生活のリスクで比較を行ってみようと思う。

クマ:重要なテーマだね。

Koby:その通り。リスクのとらえ方は、まぁ個人の自由みたいなところがあるから、事実をできるだけ客観的に理解することが重要なんじゃ。そして、個人個人で可能なかぎり判断することが、大切なんじゃ。

さて、それでは、比較した結果を説明しよう。
まず、この図を見てくれ。 これは、普通の生活における種々のガン化の相対リスクについて、発表文献から整理をしたものじゃ。
たとえば胃ガンに対するピロリ菌の影響は、ピロリ菌の有無で7.9倍の相対リスクとなる。タバコの肺ガンへの影響、過度の飲酒の肝臓ガンへの影響など、数多くの生活習慣の影響が調査されている。 また、相対リスクが1より小さい場合は、ガン化が抑制される訳じゃ。野菜の摂取とか、適度な運動など生活習慣を改善する効果が調査結果として表れておる。

この調査結果については、すでにいろいろなところで説明されているから、そう"びっくり"するものではないだろう。

しかし、このリスクに、化学物質の環境基準レベルのリスク(1万分の1〜10万分の1)、また放射線のリスク(年間100 ミリシーベルトまでゆっくりと被ばくする場合、放射線によるがん死亡は0.5%:国際放射線防護委員会)をプロットしてみると、その差が良く分かる。

なぜ、化学物質の基準値のリスクがこんなに小さいかというと、まず化学物質のヒトへの影響は自体、未知の部分が多いので動物実験の無毒性量へ1/100から1/1000の安全係数をかけているからじゃ。
これらを良く理解して、種々の環境リスクを考えることが重要なんじゃ。

Risk-cmpareT11.jpg



TDIimage11.gif

 また、リスクのグラフを眺めていると、活性酸素を切り口にしたガン化と健康影響が、見事にその調査結果に表れておることも分かるだろう。

クマ:なるほど。確かに、個人の考え方と理解の仕方が重要なことが良くわかったよ。それに、リスクがある場合もそれを避けられる手段があれば受け入れられやすくなるし、このあたりは自分でよくよく理解しないといけないなぁ〜。

Koby:その通り。



参考文献
独立行政法人 製品評価技術基盤機構 化学物質管理センター
化学物質のリスク評価について−よりよく理解するために−
http://www.safe.nite.go.jp/shiryo/RA/about_RA4.html