お焦げのリスク/ベンゾピレンのリスク
<クマ:自分の生い立ちを調べているクマムシ>
<Koby:一緒に調査している科学オタク>
Koby:辛ラーメンのスープから「ベンゾピレン」が検出され、製品回収というような話を聞いたが、あまり聞きなれないベンゾピレンについて調べてみた。
クマ:なんか、ややこしい名前だね。
Koby:そうじゃの。このベンゾピレンという化合物は、おもに、有機物の高熱分解反応(焼く、焦がす、etc.)で生じる物質で、実は、そこらじゅうに存在している。
コールタールの発ガン性の調査から有名になった物質なんじゃが、調べてみると、有機物の高熱分解反応(焼く、焦がす、etc.)で自然と生成され、肉および魚のフライ、グリルおよびくん製等の食品中、乾燥重量あたり数ppb〜数10ppb含まれとるんじゃ。
クマ:ppbとは10億分の1のことだから、相当少量だけれど、日常的に食べている食品にもはいっているんだ。
Koby:そういうことだ。料理で、焼くということは、風味を良くし消化吸収も良くする、基本中の基本じゃな。また、焼くことによる殺菌効果も多きい。食品を焼くことによる、メリットは計り知れないほど大きいんじゃが、その過程で、ベンゾピレンが必然的に発生しているという訳じゃ。
また、今回話題となった食品は、かつお節じゃが、かつお節のようなくん製食品の場合は、煙でいぶすという製造過程からも想像できるように、比較的濃度の高いベンゾピレンが含まれている。
くん製により、風味とくに香りが改善され、また食品の長期保存にも耐えられるようにもなるわけで、その代償というものでもないが、ベンゾピレンも多めに含まれるということじゃ。
クマ:リスクはどのくらいあるの。
Koby:50gの肉(炭火焼肉でベンゾピレン50ppb含有と仮定)を体重50kgの人が毎日食べる場合で、ガン化確率0.0365%と推定される (畝山智香子著「安全な食べもの」ってなんだろう?放射線と食品のリスクを考える』(日本評論社)EPA(米国環境保護庁)発がんのスロープファクターを参考)。
クマ:ポテトチップスのアクリルアミドと比べると、ちょっと小さいけど、まぁ、にたりよったりだね。
Koby:辛ラーメンの場合は、どうも基準値が定められていて、それを超過したから大騒ぎになったようじゃが、そのリスクがどの程度のものかは、冷静に考える必要はあるかもしれん。
表に、放射線リスクとの比較を示すが、このベンゾピレンは、放射線のリスクとその性質が良く似ている。 つまり、極少量は日常的に食品や周囲の環境から体のなかに取り込まれており、かつ、発ガン性があるという点じゃ。
こういう場合は、リスク(確率的影響度)で議論しないと、判断をあやまることになるから要注意じゃ。
参考文献
畝山智香子著「安全な食べもの」ってなんだろう?放射線と食品のリスクを考える』(日本評論社)
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