ワイン・ビール・日本酒の抗菌作用

 

<クマ:自分の生い立ちを調べているクマムシ>

<Koby:一緒に調査している科学オタク>



Koby:さて、今回はお酒の成分に関する考察じゃ。

クマ:お酒の効果は、医学的にも、科学的にも、いろいろ研究されているらしいけど、おもしろい話なの。

Koby:そうじゃな。一般的に、研究者はワインはワイン、ビールはビールという具合に、研究する対象を絞り、より深く専門的な研究を目指すんじゃが、今回のアプローチは、それぞれの研究結果をもとに、新しい考察ができないかという試みじゃ。

クマ:なんとなく、おもしろそうだな。

Koby:では、紹介しよう。

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 まず、この表を見てくれ。これは、ワインとビールと日本酒について、製造方法の違いと本質的に含有する成分の特性をまとめたものじゃ。  それぞれのお酒は、糖分が酵母菌によるアルコール発酵でお酒となる仕組みは同じなんじゃが、その原材料と発酵プロセスが大きく違う。

 ワインの場合は、ご存じのように、ブドウを原料としてブドウ中の糖類(ブドウ糖、果糖)を直接発酵させるプロセスじゃ。他の発酵プロセスに比較して単純なため、歴史は一番古く、紀元前8000年ごろから造られていたようじゃ。また、ブドウそのものを原料とするので、結果的に、ブドウ自体のポリフェノールが含まれることになる。

 ビールは、大麦と麦芽から、飲み物よりもむしろ主食にちかい粥としての製法が、確立したようじゃ。ワインよりすこし新しく紀元前3000年ごろのようじゃ。 この粥状のビールが、いろいろ改善され現在のビールとなるんじゃが、一番の改善ポイントは、品質の保持と香り・味付けだったようじゃ。11世紀頃、ドイツで、それまでに種々試されていた添加物にかわってホップを初めて用いた。ホップには独特のさわやかな風味と雑菌抑制効果があり、15世紀頃にはドイツのビール醸造で主流となった。

 日本酒の場合は、ワイン、ビールより新しく、飛鳥時代(西暦700年頃)に登場したようじゃ。米か直接、酵母菌のアルコール発酵はできないので、米デンプンの糖化プロセスが必要になる。これに、麹を使用したんじゃ。結果的に、日本酒には麹由来の抗生物質が含まれることになる。 また、日本の場合は、日本酒以外にも味噌、醤油の製造に麹が使用され、欧米とは違う発酵食品の体系を構築している。

 原料、製造方法も全く違う3種類の発酵酒であるが、このように製造方法から本質的に含有する成分の特性が品質の保持という点については、良く似ている。 つまり、ワインはブドウ由来の、ビールはホップのポリフェノールが、品質の保持に一役買っており、日本酒は、麹のつくる種々の抗生物質が効果を発揮していると言える。 最近の研究では、植物由来のポリフェノールがヒトの健康に良い影響を及ぼす効果や、麹の健康増強効果も、いろいろ調べられており、製造方法から本質的に含有する成分の効果は今後ますます明らかになるじゃろう。

クマ:こういう見方をすると、面白いものが見えてくるね。

Koby:全くそのとおりじゃ。また、バイオエネルギーが今後重要になってくることが考えられるが、アルコール発酵をいかに効率的に行うかがポイントで、お酒の製造プロセス自体が、その改善に大変参考になるそうじゃ。 事実、植物のデンプン以外に、植物の体を構成しているセルロースそのものを、原料としてバイオアルコールを造るプロセスも種々実験されており、このプロセスが原料費+製造コスト合わせて、充分安価になれば、追加的な二酸化炭素を発生させない素晴らしいエネルギーとなるんじゃ。

クマ:バイオエネルギーへの転換か。おもしろいな。

Koby:話はまだまだ続きそうじゃが、今回はここまでと、しよう。乞うご期待じゃな。