記憶力低下のリスクと、その対策
<クマ:自分の生い立ちを調べているクマムシ>
<Koby:一緒に調査している科学オタク>
Koby:久しぶりの、リスコミ情報として、今回は、記憶に関する大変興味深い情報を提供しよう。
クマ:記憶力低下のリスクとは、アルツハイマーとかそういうことに関係あるの?
Koby:おっ、いい勘しているな。そこにも、少し関係するが、もっと根本的な情報じゃ。
クマ:早く教えて。
Koby:よし、きた。 実は、独立行政法人 産業技術総合研究所(産総研)が、老化に伴って脳内の神経新生が減衰していく仕組みを解明し、老化で低下した「新しく神経を作る力」が、運動等によって再び活性化するメカニズムをつきとめたんじゃ。
クマ:ビックリ。脳細胞って、新しくできないと聞いていたけど。
Koby:長年、死んでしまった脳細胞は再生しないと思われ続けてきたんじゃが、20世紀後半になり、脳にも神経幹細胞という神経系細胞の基となる細胞が発見され、再生する可能性がある事が分かったんじゃ。
また、特に、記憶を司る海馬といわれる脳の一部分では神経幹細胞によって、常に神経再生が行われており、脳のリフレッシュ(恒常性の維持)に役立っている事が明らかになってきておる。
クマ:そうなんだ。パソコンでも、メモリーを増設しないと必要なデータの保存能力がたらなくなるのと同じだね。
Koby:うまいこと、いうな。全くそのとおり。
「学習」と「記憶」の能力を司る脳内の海馬(かいば)という部分には神経幹細胞が存在し、大人になっても新しい神経細胞がたえず作らとるんじゃ。そして、海馬で神経細胞の一番下の層を形成しているアストロサイト細胞が、Wnt(ウイント)という細胞内情報伝達アミノ酸を放出して、神経幹細胞を有効な神経細胞へ成長させる重要な役割を持っておることが分かったんじゃ。
また、老化によって、神経細胞を産み出す能力も減衰するんじゃが、なんと、なんと、アストロサイト細胞は、老化した脳内でも運動などの生体の外から与える刺激によって、Wnt(ウイント)を増産し、その結果として神経新生機能が増すことが分かったんじゃ。
クマ:それは、すごい。このメカニズムを活性化する方法が、詳しく分かれば、ものすごいことだね。
Koby:そうじゃ。今回の発表では、適度な(ストレスにならない程度の)運動が、Wnt(ウイント)を増産する効果があったということじゃ。
クマ:本当に、運動は大切なんだ。
Koby:Wnt(ウイント)を増産する効果的な方法は、現在研究中とのことじゃが、大いに期待できそうじゃ。
**Wnt(ウイント)は、細胞内で、DNA情報を細胞に伝える重要な物質で、現在、ものすごい勢いで研究がされている。
参考文献
産総研:2011年8月8日 老化した神経幹細胞を活性化する環境因子の発見
http://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/nr20110808/nr20110808.html#b
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