植物の色素と活性酸素対策

<植物に必要な活性酸素除去能力>トマトの色

 植物はご存じのように、太陽の光をつかい光合成を行います。光合成とは、光の電磁波としてのエネルギーをデンプンなどの化学エネルギー源に変える作用ですが、この時に電磁波によって活性酸素が多量に発生します。

 光合成は、この活性酸素のエネルギーを上手に化学エネルギーに転換しているわけですが、転換できなかった活性酸素は、植物にとっても有害なものです。

 この、有害な活性酸素を中和しているのが、植物色素なのです。

 

 植物は、太陽光線にあたっているかぎり、光合成を行い、また光合成として使われなかった光からも活性酸素が発生します。晴れているかぎり、太陽光線にあたるわけですから、どんどん活性酸素が発生します。

 光合成を行うことは、活性酸素をいかに上手に処理するかが大変重要になります。植物は、誕生して以来、この活性酸素を制御する能力を進化させてきました。

 

花と色素

<植物色素の種類>

 植物色素といってもたくさん種類がありますが、その構造で大きく3種類に分けることができます。

 (1)カロテノイド類:葉っぱなどに多く含まれている黄色の色素です。構造は、炭素の1重結合と2重結合が交互に並んだポリエン構造が特徴で、そのポリエン構造の端の構造式で種類が分かれます。代表的なものに、ビタミンAの源として有名なβカロテンや、トマトのリコピンなどがあります。葉っぱに多く含まれているので光合成に深く関係する色素です。

 (2)フラボノイド類:花や実に多く含まれる色素です。15個の炭素原子を有し、2つのベンゼン環が3つの炭素原子で結合された骨格を持つことが特徴であるポリフェノール化合物です(フラボノイドはポリフェノールの1種)。

 有名なものに、ブルーベリーのアントシアニンや、緑茶のカテキンやコーヒーに含まれるタンニンなどがあります。果実の種々の色は主にものフラボノイドが発色したものです。

 (3)ポリフィリン類:葉緑素(クロロフィル)など。動物の血液のヘモグロビンもポリフィリンの仲間。

 

<動物にとって重要な抗酸化物質>

 動物も自分自身で抗酸化物質つくりだすことができますが、かなりな部分を植物の抗酸化物質に頼っています。

 特に、カロテノイド類とフラボノイド類は、抗酸化力が高く、ビタミンにつぐ必須栄養素として考えることもできうる重要なものです。

 動物の長い進化の歴史のなかで、本能的に植物の果実から必要な栄養素を吸収し、かつ植物はその色素を果実などに集中させ、種子拡散による子孫繁栄を実践してきたのでしょう。

 色とりどりの野菜や果物を食べることは、一種の本能的な行動かもしれませんが、健康を保つ上でも大変に重要であることが分かります。



図1.代表的なカロテン carotenoid-kind