花の色素と、花をたべよう

【花の色素:なぜ花には美しい色が?】

花と色素


皆さんは、「花は、なぜ綺麗な色をつけているのか」という疑問を一度は子供時代に考えたことがあると思います。
そこで、今日は「花は、なぜ綺麗な色をつけているのか」について、最新の研究結果をもとに調査をしました。

まず、植物の子孫繁栄のための進化の結果からという点について。

植物は、子孫を残すために受粉を行う必要があります。
自ら動くことのできない植物は、受粉を風や雨などの自然現象にたよってきましたが、恐竜が絶滅したあと勢力をのばした被子植物は、この受粉を積極的に、昆虫や鳥類にゆだねたのです。

下の図は、生物が感じる色と花の色素の関係を示したものです。植物の代表的な色は、もちろん光合成を行うための「緑」が基調であることは明白ですが、その「緑」のなかで、花は目立つ色に進化したのです。
目立つ色とは、ヒトにとってではなく、受粉を媒介できる昆虫や、鳥類にとって目立つということです。
昆虫の視覚は、ヒトに比べて、青色側にかたよっていることが調査報告されています。また、ヒトでは見ることのできない紫外線領域の波長についても敏感に感じることができます(みつばちなど)。
従って、受粉を容易に媒介してもらえるように、紫外線領域も合わせて、花の色彩が工夫されたのです。 (アゲハは紫外線領域が見えないのですが、植物は特に受粉の効率の高いハチ類に照準を合わせたのでしょう。)


色素と視覚



 この写真は、菜の花を紫外線領域のみで見るとどうなるかを示したものです。
ヒトの目では全部黄色ですが、紫外線で見ると、受粉のスポットである中心が区別されて見えていることが分かります。

また、紫外線は植物にとっても活性酸素を発生させる有害なものなので、特に種子をつくる生殖器官がある中心は、紫外線を吸収できる色素(フラボノイド)が存在しています。

フラボノイドは、ヒトに目には、赤色から紫、青、水色まで幅広い発色をする色素ですが、紫外線も吸収できる種類があることが知られています。
フラボノイドは、花自体を昆虫にとって目立つようにしているとともに、種子をつくる生殖器官を紫外線から守っているのです。

次に、鳥類の視覚は、昆虫と比較すると、昆虫には見えない赤色が、はっきりと識別されます。また、昆虫と同様に紫外線領域も見ることができます。

赤い花は、ヒトと鳥類にのみ理解できる色となる訳ですが、むしろ色彩的な美しさからヒトの手によって、種類が増えて行ったと言ってよいでしょう。
果実の色としての、赤色は最重要色です。つまり、果実を動物、鳥類が食べることにより、種子の拡散が図れると同時に、排泄させる時の糞が植物の栄養素となるからです。

果実の色が、赤いものほど食べたくなるのは、進化の過程ですりこまれた記憶と言ってよいでしょう。


<菜の花の普通のカラー写真と紫外線白黒写真(黒い部分が紫外線吸収領域)>

菜の花の紫外線写真

<タンポポの普通の写真と紫外線写真(赤が紫外線吸収領域)>

タンポポの紫外線写真


【花を食べよう】


「花を食べる」なんて、と思われるかもしれませんが、いちじくや、カリフラワー、ミョウガは立派な花です。
東北地方では、黄色や白色の菊の花が食材として有名です。

花の色素でも解説したように、フラボノイドは紫外線吸収効果もあり、カロチノイドは、ビタミンAのもとにもなります。
ヨーロッパでは「エディブルフラワー」と呼び、料理の彩りや香りづけに利用するのはもちろん、ビタミンや種々の抗酸化物質(フラボノイド)なども含まれ、野菜や果物と同じように食べられています。

しかし、花屋さんの花は、農薬や、鮮度保持剤が使われているため食べられません。
食べるために栽培・販売されている花を購入するか、自分で育てる場合は、無農薬、または低農薬で育てる必要があります。
また、花に毒性があり、食べると危険な花もあるので注意が必要です。

※食べられない花の一例:キキョウ、スイセン、彼岸花、クリスマスローズ、シャクナゲ、クレマチス、アジサイなど。

※食べることのできる花:ノースポール、ローズマリー、ナスタチューム、バーベナ、ペチュニア、ゴーヤ、スイートアリッサム、デンファレ、サクラ、チューリップ、ミニヒマワリ、メランポジウム、ジニア、カレンジュラ、ナデシコ、ラベンダー、トレニア、インパチェンス、デージー、サイネリア、プリムラ・ジュリアン、キンギョソウ、パンジー、ビオラ、ベゴニア、ペンタス、マリーゴールド、など


 特に、カロテノイド類とフラボノイド類は、抗酸化力が高く、ビタミンにつぐ必須栄養素として考えることもできうる重要なものです。

 動物の長い進化の歴史のなかで、本能的に植物の果実から必要な栄養素を吸収し、かつ植物はその色素を果実などに集中させ、種子拡散による子孫繁栄を実践してきたのです。


 色とりどり花を食べることは、健康面からも効果があることが分かります。





参考文献
バイオメカニズム学会誌, Vol.31, No.3 (2007), 鳥類の視覚受容機構   https://www.jstage.jst.go.jp/article/sobim/31/3/31_3_143/_pdf

生命健康科学研究所紀要 第5号 2009 解 説 昆虫の視覚世界を探る  http://ir.bliss.chubu.ac.jp/cgi-bin/retrieve/sr_bookview.cgi/U_CHARSET.utf-8/XC09000113/Body/link/045_arikawa.pdf

CERの森を利用したミツバチ研究 http://www.ecology.kyoto-u.ac.jp/ecology/cooperate/forest/research/cer-bee.htm

独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 花き研究所 花の色のしくみ http://www.naro.affrc.go.jp/flower/kiso/color_mechanism/index.html

農林水産省 HP 「特集2 食材まるかじり 花を食べる」 http://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1004/spe2_01.html