カネボウのロドデノール白斑問題

<クマ:自分の生い立ちを調べているクマムシ>

<Koby:一緒に調査している科学オタク>



Koby:カネボウの白斑問題についての考察。
詳細は下の表にまとめたが、ロドデノールの原料は食品の香料などに使われるラズベリーケトンという物質で、ラズベリーケトンも20年以上前、国内でラズベリーケトンを作っていた工場の従業員たちに白斑の被害を引き起こしていた事実などから、承認の過程で入念な白斑の検証が行われたようだ。
結果的に白斑の発生はないと判断されたが、科学的には化学物質のゼロリスクはあり得ない。
日本の場合は、影響が出るか出ないか(白か黒か)だけの評価に傾きがちで、確率としてのリスク評価を行える(議論できる)体制を検討する必要がある。

これらの一連の、リスクコミュニケーションは、社会と企業が成熟していくためには、必須条件であることは明確であり、また、社会と企業が目指す理想のリスク管理技術こそが、今後日本の社会と企業が目指す、日本にしかできないリスク管理技術となるはずである。


表1  ロドデノールの審査結果と問題点
医薬部外品認証手続き人体に対する作用が緩和な物であって機械器具等でないもので、@吐きけその他の不快感又は口臭若しくは体臭の防止Aあせも、ただれ等の防止B脱毛の防止、育毛又は除毛および@〜Bに準ずるもので厚生労働大臣が指定するものとして、薬用化粧品は、「届け出」をし、審査承認されれば、企業の責任で販売できる。審査の流れは医薬品と同じで、動物実験、さらに人に使う臨床試験で、安全性や効果などを調べ、専門家の審査を経て、厚生労働省が製造販売を承認する。【薬事法第2条第2項】
ロドデナールの審査結果高濃度成分配合製剤の長期使用による白斑、色素脱失非形成の確認 本成分が過量適用された場合に、メラノサイトの数を減少、消失させないことを確認する目的で、美白成分の濃度を2倍にして6か月使う試験を健康な成人12例を被験対象とし実施され、白斑、色素脱失非形成等の色素異常は確認されなかった。 厚生労働省は、承認に際して、製造販売後も2年間調査をするよう求め、およそ1200人を対象に調査がおこなわれた。しかし、いずれの試験や調査でも白斑という報告はなかった。
問題点(1)製造販売後の調査が行われたのは、2010年1月までで、白斑を起こしたケースはなかった。 販売後調査が終わると、さまざまなシリーズの化粧水や乳液、クリームなどが承認を受け、販売されるようになった。白斑の原因を調べている日本皮膚科学会によると、複数の製品を使うと、成分の使用量が増え、白斑が起きやすくなったという可能性が指摘されてる。 使う量が増えた場合の安全性について、臨床試験で成分の濃度を2倍まで引き上げる試験を行ったが、同じ成分を含む製品を3つも4つも重ねることもある化粧品の使い方を考えると、厚生労働省の承認審査の手続きについても見直すことも必要かもしれない。
問題点(2)2013年5月、3例の白斑の症例が報告され、これをきっかけに、過去にさかのぼって調べたところ、店頭や電話などで顧客から33例の白斑の情報が寄せられていたことが判明。情報がありながら、カネボウは1年半の間、会社として対応ができていなかった。カネボウの説明では、製品ではなく肌の問題と判断したりしたということだが、化粧品会社としての危機管理ができていないと言わざるを得ない。
問題点(3)ロドデノールの原料は食品の香料などに使われるラズベリーケトンという物質で、ラズベリーケトンも20年以上前、国内でラズベリーケトンを作っていた工場の従業員たちに白斑の被害を引き起こしていた事実などから、承認の過程で入念な白斑の検証が行われたようだ。結果的に白斑の発生はないと判断されたが、科学的には化学物質のゼロリスクはあり得ない。日本の場合は、影響が出るか出ないか(白か黒か)だけの評価に傾きがちで、確率としてのリスク評価を行える(議論できる)体制を検討する必要がある。






日米の環境基準比較





参考文献

カネボウ ホワイトニングエッセンスS 審議結果 厚生労働省医薬食品局審査管理課
下記の医薬部外品の承認審査情報に「4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノール」を入力し検索
http://www.info.pmda.go.jp/approvalSrch/QuasiDrugSrchInit?