iPS細胞の実用化のハードル

<クマ:自分の生い立ちを調べているクマムシ>

<Koby:一緒に調査している科学オタク>



Koby:病気の治療に使うため人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作る組織の安全性について、厚生労働省所管の「医薬品医療機器総合機構」の有識者会議は科学的に確認すべき項目を提言としてまとめた。

クマ:へぇ〜。

Koby:「iPS 細胞等に由来する細胞組織加工製品の造腫瘍性(ガン化)について、そのリスクをゼロにすることは現在の科学技術では困難であること、また、一方で、疾患を抱えた患者からiPS細胞の実用化が期待されていることについては明確なコンセンサスが得られた。そのことを承知した上で、現時点で活用可能な手段を合理的な範囲で活用し、できるだけリスクを減らすよう努力する必要がある。」としている。

このように、iPS細胞の実用化に当たっては、種々の調査・研究が必要じゃが、各国にアプローチの概要を、表2にまとめた。日本の場合は、米国の手続き法の考え方と、独の根拠法の考え方を、両法完璧に成立させようとする法律体系なので、iPS細胞分野で、世界をリードできる体制を構築するには、どこまで実効的な法律の整備ができるかが課題ということだ。

クマ:日本、ガンバレ。


表1  iPS細胞から作る組織の安全性について
  厚生労働省所管「医薬品医療機器総合機構」有識者会議
ガン化についてiPS 細胞等に由来する細胞組織加工製品の造腫瘍性(ガン化)について、そのリスクをゼロにすることは現在の科学技術では困難であること、また、一方で、疾患を抱えた患者からiPS細胞の実用化が期待されていることについては明確なコンセンサスが得られた。そのことを承知した上で、現時点で活用可能な手段を合理的な範囲で活用し、できるだけリスクを減らすよう努力する必要がある。
方向性iPS細胞実用化の開発は日進月歩である。先端的な分野であるほど、「誰もが未経験」であるために、品質や安全性確保は困難になる。その克服には、既存の評価技術の活用を諮ると共に新規評価法の開発を継続的に推進する努力が必要である。



表2  iPS細胞実用化に関する国別の法比較
国名法律の特徴iPS細胞実用化への方向性
日本米国の手続き法の考え方と、独の根拠法の考え方を、両法完璧に成立させようとする法律体制iPS細胞分野では、世界をリードできる体制の構築を模索中。しかし、法律体系に、根拠法と手続き法を両法完璧に整合させるという厳密さがあるので、法体系面で、有利な米国や独に対して、どこまで実効的な法律の整備ができるかが課題
判断の根拠となるルール、状態を法律において、できるかぎり具体的に定義していく法律体制徹底的な調査や議論の末に、方針が決まれば、それを達成するための法整備を行うことで、目的事業の実効性が速くなる。iPS細胞についても、同様のアプローチを行っている。
米国まずは行った結果として、なんらかの影響が発生した場合、発生者と享受者がなっとくできるロジカルな手続きを構築していく法律体制トライ・アンド・エラーの精神で、実行という観点からは最も早く進む環境にある。実行の結果、問題が発生した場合は訴訟で解決する。



参考文献

政府の総合科学技術会議の生命倫理専門調査会報告
http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/life/haihu74/siryo2.pdf


iPS 細胞等をもとに製造される細胞組織加工製品の造腫瘍性に関する議論のまとめ
厚生労働省所管「医薬品医療機器総合機構」有識者会議
http://www.pmda.go.jp/
guide/kagakuiinkai/kagakuiinkai/h250820gijishidai/file/torimatome1.pdf



ES細胞研究に関する法改正(ドイツ)
NEDO海外レポート NO.1025, 2008.7.2
http://www.nedo.go.jp/content/100105466.pdf