iPS細胞と細胞外マトリックスからの再生医療の比較

<クマ:自分の生い立ちを調べているクマムシ>

<Koby:一緒に調査している科学オタク>



Koby:アメリカのピッツバーグ大学マクゴワン再生医療研究所の医学博士、スティーブン・バディラック(Stephen Badylak)医学博士は、ブタの膀胱から抽出したコラーゲンを主体とする細胞外マトリックス(膀胱壁を構成する細胞以外の物質)を用いて、第一関節から先がない指の傷口にその粉末を振りかけ(1日置きに再振りかけ)約1カ月後には指を再生させることに成功したそうじゃ。

クマ:それは、すごい。

Koby:一般に入手可能な精製したコラーゲンではないため、細胞の増殖や分化に影響する様々な因子(タンパク質)が、含まれていることが、そのメカニズムと考えられている。
 iPS細胞も、また再生医療がその目標の一つじゃから、そのアプローチの方向性から比較を行ってみた。


iPS細胞と細胞外マトリックスからの再生医療の比較
iPS細胞からの再生医療細胞外マトリックスからの再生医療
再生方法幹脂肪から対象臓器細胞を分化させる。自身の切断あるいは機能不全になった組織をもとに、新しい組織を分化させる。
メカニズム分化のプロセスを解明し適用細胞外マトリックスに含まれる増殖や分化に影響する様々なタンパク質を利用
展開性ロジカルな分化メカニズムの構築がポイントケース・バイ・ケースでどちらかというと運まかせ
共通点分化をコントロールする因子(タンパク質)が必要細胞外マトリックスに確率的に含まれる増殖や分化に影響する因子


 上の表は、その比較表じゃ。iPS細胞の場合は、分化の基となる幹細胞(iPS細胞)から、分化を進めて目的臓器を作ろうとしている。この技術に必要不可欠なのが、分化をコントロールする因子(タンパク質)の解明じゃ。それに対して、細胞外マトリックス由来の粉末から、自身の切断されたり、機能不全になった組織を再生させようとするのが、ピッツバーグ大学マクゴワン再生医療研究所スティーブン・バディラック博士の方法じゃ。

クマ:どう違うの。

Koby:最終的な目標は同じじゃが、そのアプローチが違う。切断されたり機能不全になった自身の組織を土台に、どちらかというと「運」まかせの細胞の再生力を、利用するみたいなアプローチのように思える。iPS細胞の場合は、それに対してが、ロジカルな分化メカニズムの構築を解明していく部分が、今後の成功のキーとなるじゃろう。

 いずれにせよ、この分野はものすごい速度で研究が進んでいるので、ここ数年のうちには、筋道が見えてくることを期待しておるよ。

クマ:楽しみだね。



参考文献

細胞外マトリックスの多様性とインテグリンシグナリング
大阪大学蛋白質研究所
http://www.protein.osaka-u.ac.jp/chemistry/research/ECM.html

Regenerative Medicine Help for Soldiers
McGowan Institute for Regenerative Medicine
University of Pittsburgh Medical Center
http://www.mirm.pitt.edu/news/article.asp?qEmpID=456