生命誕生と深く係わるシアン

 

僕はクマムシ

僕はクマムシのクマという1mmくらいのちっちゃな動物です。
いつもは、道ばたのコケなんかの中にいて、コケの樹液を吸って生きています。
ところが、先生たちの研究で、宇宙空間で生きられることが分かりました。
いまのところは、ほんの1週間程度の実験ですが。 自分でも、びっくりです。
宇宙空間では、強い放射線があり、また極度の真空状態で体は完全にひからびてしまします。
けれど、僕は体の水分子を、トレハロースに置き換えて丸まってしまうこともその理由の一つだと先生たちは説明してくれています。
自分の強さに目覚めてしまった?わけでもないのですが、無性に「生命の強さ」を知りたくなりました。
そこで、偶然ネットで知り合った(ムシの世界でも最近はインターネットが流行、体表面に広がる神経組織がヒトのインターネット網と偶然につながる現象で内部網とも言われている)自称科学オタクのKobyと「ポイズン」について調査開始です。



1.生命誕生と深く係わるシアン

クマ:とうことで、Kobyさん、「シアン」の調査に付き合ってほしいんだけど。

Koby:報酬はなにかあるのかな。前回は、全くのただ働きだったからな。 クマ:う〜ん。 じゃ、僕の秘密が分かったら、最初に教えてあげるから、それで勘弁して。

Koby:いつ分かるかも、分からないけど、まぁいいか。

クマ:さすが、Kobyさん。 ふとっぱら。

Koby:ウッ。体型も「ふとっぱら」じゃかの。さて、それでは調査開始じゃ。

(調査開始して2週間後)

Koby:さて、調査結果を披露しよう。

クマ:待ってました。

Koby:地球が誕生した今から46億年前、地球の海と大気には全く酸素がなく、二酸化炭素とアンモニアが大量に存在したようじゃ。
すなわち、大気は強い還元性雰囲気で、現在の青い地球とは似ても似つかない状態だったのじゃな。
 この、強い還元性の海および大気中には、化学平衡の結果としてシアンが大量に存在していたんじゃ。

クマ:こりゃまた、すごい環境だったんだな。こんなところだと、生物は、すぐ死んでしまうな。

Koby:そうじゃな。しなし、このような、環境のもと生命は誕生するんじゃな。また、生命を構成する種々の化学物質は、当然、そのときの地球の海と大気の成分から調達するしかないんじゃ。
 そして、40億年前、このようにして生命が誕生するのですが、原始生命には、太古の地球の海、大気成分の影響が強く刷り込まれることになったんじゃ。
シアンも、そういうことで原始生命の生命をつかさどる機構に深く関与したようじゃ。

クマ:たしかに、生命が誕生するときは、周りの物質からからだのもとになるものを調達しないと、なにもできないよね。

Koby:その後、40億年がたち、生物は大いに進化するわけじゃが、生命を維持する根幹の化学反応にシアン系の物質が酵素的に組み込まれた可能性は大きんじゃ。
とういうことで、シアンの毒性は、シアン化合物が胃酸と反応して生成するシアン化水素の気体を、吸い込むことで、その呼吸(酸素交換)に関する酵素活動を一瞬のうちに止める作用にあるとされておる。

クマ:シアンは猛毒なんだね。

Koby:そうじゃ。ところが、シアンが効かないヒトもいるようじゃ。
 かの有名はロシアの皇帝ラスプーチンには、シアンが効かなかったという「うわさ」があるんじゃ。事実、シアンを使った毒殺計画を無事切り抜けてきたとの史実があるんじゃが、どうも皇帝ラスプーチンは、胃酸が非常にすくない体質だったようで、シアンを盛られても、胃酸が少ないので死に至るまでのシアン化水素が発生しなかったようじゃ。

クマ:ヘェ〜。

Koby:また、シアン化合物の有害性を除去する物質は、硫酸銅水溶液とか塩化鉄水溶液とかが有効なんじゃ。
これは、シアンと銅や鉄が強固は錯体(化学物質)をつくり、酸と反応することを防止し、シアン化水素を発生させないようにする効果があるためなんじゃ。
 また、あまりにこの化学物質は安定なので、アメリカなどでは「フェロシアン化ナトリウム」が、食塩の潮解性(大気中湿分によるべたつき)防止剤として使われておったりするんじゃ。

クマ:ヒョエ〜。アメリカでは、知らずしらずのうちに、シアン化合物を食べっちゃったりしてるんだ。ビックリ。