東京湾の底質

<クマ:自分の生い立ちを調べているクマムシ>

<Koby:一緒に調査している科学オタク>



Koby:前回は東京湾の水質について考察したので、今回は底の状態(底質)について調査した。

クマ:東京湾の底は、いったいどうなってんだろう?

Koby:東京湾の湾央から湾奥部にかけては、過去(江戸時代から戦前)においては、藻場が発達した良好な漁場であった。
 しかし、都市機能や産業経済活動の発展を重視した結果、アマモやアオサに代表される藻場は、ほとんど絶滅した。その結果、東京湾の底質には、硫黄酸化細菌に代表される硫化水素分解細菌が増殖している。

 東京湾の特徴として、夏にあると湾央から湾奥部にかけて、この硫黄酸化細菌の糸状構造で作られるマットで底質の堆積物表面が真っ白な絨毯のように覆われる現象がみられる。
 これは、通常では底質の還元層に潜んでいる硫黄酸化細菌糸状構造が、夏場の貧酸素化が著しくなると、堆積物中に潜り続けることができなくなり、酸素を取り込みやすい堆積物表面に移動することが、原因ではないかと考えられている。

 低層水から酸素が無くなると、硫化水素が水中に溶け出しやすくなり、硫黄酸化細菌はこの硫化水素を酸化することで、底生生物や底層水の環境を守ることに貢献していると考えることもできるが、一方堆積物中でのアンモニア生成がより盛んになることから、底質環境の悪化につながっている可能性も指摘されている。

 また、東京湾で夏場になると発生する貧酸素水塊は、水圏生態系を破壊し、生物の多様性や海洋生物資源に大きな負の影響を与える。 いずれにせよ現在の劣悪な東京湾の底質改善を、藻場の復活、再生が可能になるところまで継続することが重要である。

クマ:水質環境も大事なんだけど、底の状態も大事なことが良くわかりました。





参考文献

海の環境100の危機[東京大学海洋研究所DOBIS編集委員会編]