快適な睡眠と見える化/睡眠センサービジネス

<クマ:自分の生い立ちを調べているクマムシ>

<Koby:一緒に調査している科学オタク>



Koby:東京オリンピックにつながる睡眠と健康に関するビジネスについて。

クマ:おもしろそうだね。詳しく教えてください。

Koby:現代の脳科学によると、睡眠とは脳の進化とともに大きく発達した大脳をうまく休ませる、脳を含めた体の機能を維持するための行動であるとしています。 とりわけ、発達した大脳をもつ私たち人間にとっては、睡眠のクオリティーが生活自体のクオリティーを左右するので、「よりよく生きる」ことはとりもなおさず「よりよく眠る」ことになるのでしょう。

さて、睡眠のしくみについて分かりやすく解説することにします。

<レム睡眠とノンレム睡眠>
皆さんも一度くらいは聞かれたことがあるはず。レム睡眠とは、急速眼球運動(rapid eye movementの頭文字 REM からレム)を伴う睡眠のことで、閉じたまぶたの下で目がきょろきょろする眠りの状態です。体はぐっすり寝ていますがが、脳は目覚めに近い状態になっていて夢を見ていることが多い眠りです。
ノンレム睡眠とはレム睡眠でない眠りという意味で、手足はほとんど動かさず、深く熟睡している状態のことです。ノンレム睡眠の由来は、魚類や両生類などの変温動物の眠りと共通す古い型の眠りであると考えられています。筋肉を緩ませ、動かないことで体温を下げ、消費エネルギーをミニマムにする省エネ型の睡眠です。死んだように動かないことで天敵などから襲われるリスクも減少します。
これに対してレム睡眠は、哺乳類や鳥類などの恒温動物に特有の眠りです。恒温動物では長い連続したノンレム睡眠では、高度化した脳機能の停止時間が長すぎ体温も低下しすぎてしまいます。変温動物は体温を下げることに関しては問題ないのですが、恒温動物では体温を極端にさげることは体の機能維持ができなくなることにつながります。このため、恒温動物のレム睡眠の最も重要な役割は、意識水準や体温を下げてしまうノンレム睡眠と、完全に逆の性質をもつ目覚め(覚醒)との橋渡しをすることにあります。
それぞれの役割をまとめると、ノンレム睡眠は大脳を休ませ回復させる眠り、レム睡眠は、大脳を極端に深く眠りさせず、深い眠りから引き上げる目覚めの眠りであると言えるでしょう。

<気持ちよく目覚めるために>
健康な人では、ノンレム睡眠とレム睡眠の2種類の眠りが約1.5時間のまとまりをつくり、このまとまりがいくつか集合して一夜の睡眠となっています。最初の2つのまとまり(寝つき後すぐの約3時間)に、質のよい熟睡(深いノンレム睡眠)がまとめて出現します。以後は、浅いノンレム睡眠とレム睡眠の組み合わせとなります。そして、おのおののまとまりごとに目覚めやすくなるので、約4.5時間、6時間、7.5時間後に起きるようにすれば、目覚めの気分がよいことになります。

効果的な睡眠方法


<睡眠の多様性>
動物たちはヒトのように連続して長く覚醒しつづけたり、連続して長く眠りつづけることはありません。1日に何回も眠るパターン(多相性睡眠)を採用していますが、ヒトでは学校や職場のスケジュールに拘束されています。ヒトの睡眠は自然のままではなく、人工的に変化加工されたものなのです。このためヒトの睡眠も本来多様性に富むはずです。人間も自分なりに工夫して快眠法を開発できる可能性があり、様々な生活パターンに合わせた理想的な睡眠を構築できるかもしれません。

<睡眠の見える化>
オムロンの「睡眠計 HSL-101」は一種のレーダーです。寝ている人の動きを、人体に安全な微弱電波を使って記録するタイプです。人は眠りが浅い(レム睡眠)時は、寝返りを打ったり、布団を蹴飛ばしたり、動きが激しくなります。それに対して眠りが深い(ノンレム睡眠)時は、体がほとんど動きません。睡眠中の動きをとらえることで、レム睡眠とノンレム睡眠の周期が分かります。  
タニタの「スリープスキャン・SL-504」は、寝具の下に敷いて使います。センサーマットが睡眠中の呼吸や脈拍、体動を感知し、それらをもとに、睡眠の深さやリズムをグラフで表示してくれます。

良い睡眠をとるために、自分の睡眠を測ることは、これからますます大切になるでしょう。きっと、東京オリンピックとも結びつく新しいビジネスチャンスになる可能性があります。
これから、睡眠ビジネスは目を放すことができません。

<参考資料> 睡眠の基礎:日本睡眠学会 第4回「睡眠科学・医療専門研修」セミナー