大腸菌の役目と健康影響

<クマ:自分の生い立ちを調べているクマムシ>

<Koby:一緒に調査している科学オタク>



Koby:東京湾の大腸菌対策について考察したので、今回は大腸菌そのものについて調査した。

クマ:自然な成り行きだね。ところで、おもいしろい調査結果が出たの?

Koby:久々のクリーンヒットじゃ。人間の免疫ともからむ面白いことが分かった。
では、紹介を始めよう。
まず、大腸菌とは何なのか、ということについて。

 名前の通り、人間や動物の大腸に主に住み着いている細菌で、腸内細菌の一種である。
 普通の人の場合、腸内細菌(常在菌)の存在によって腸管免疫が発達し、外部から侵入した病原性細菌が腸内で増殖するのを防止するという重要な役割を果たしている。
 人と共生している腸内細菌群は、実に縄張り根性が強く、外部から侵入しようとする新参者の細菌には栄養源を与えないので、外部の細菌は人の腸内では増殖がなかなか出来ないのだ。

クマ:それじゃ、大腸菌っていいものなの。

トラの縄張り
(大腸菌も"トラ"のように、縄張り意識が高いのか!!)

Koby:いやいや、まだその続きがある。
 大腸菌にも、非常の多くの種類がある。麹菌なども、品種によっては毒を持つものがあるように、大腸菌にも人に対して有害性を持つものがある。

 つまり、病原性大腸菌(下痢を起こす大腸菌)は、人や家畜の大腸に常在菌として住んでいる大腸菌と同じ種類に属し、腸管病原性大腸菌(病原血清型大腸菌)、腸管侵入性大腸菌(組織侵入型大腸菌)、腸管毒素原性大腸菌(毒素原性大腸菌)、腸管出血性大腸菌(ベロ毒素産生性大腸菌)の4種目に分類され、O157や、そのほかにもO26、O111、O128、O145などが有名じゃな。

 腸管免疫が弱っている(病原性大腸菌のライバル菌が少ない環境になっている)時に、この病原性大腸菌が食物などと一緒に取り込まれると、発病するんじゃな。

 また、あの有名な赤痢菌属は大腸菌属ときわめて近縁な関係にあることがわかった。これまで形態的、生化学的、病理学的な観点から、別種だと考えられてきた赤痢菌属と大腸菌属は、最近の分類に用いられているDNA-DNA分子交雑法では両者を区別することができず、遺伝子に基づく分類学上ではこれらは同種という位置づけになることが明らかになったそうじゃ。

クマ:なるほど。

Koby:というわけで、水質の大腸菌測定については、人がある程度集中して住んでいる場所で大腸菌汚染が認められる場合は、大腸菌も含んだ病原性の細菌はある程度の可能性で存在しているであろうと予測され、環境の指標となっているわけじゃ。

クマ:水質環境も大事なんだけど、腸内環境も大事なことが良くわかりました。





参考文献

生物工学 第90巻 大腸菌研究の歴史 森  浩禎
https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9010/9010_yomoyama-1.pdf


病原性大腸菌 ,平成21年度食品安全確保総合調査 「食品により媒介される感染症等に関する文献調査報告書」より抜粋 (社団法人 畜産技術協会作成)
http://www.fsc.go.jp/sonota/hazard/H21_19.pdf


各種抗生剤投与 に よる腸内細菌叢 の変動(無 菌動物を用 いた実験) 感染症学雑誌 第56巻 第12号
http://journal.kansensho.or.jp/kansensho/backnumber/fulltext/56/1203-1215.pdf


赤痢菌の同定検査に関する問題点 、横浜市衛生研究所
http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/eiken/inspection-inf/200705/pdf/02sekiri.pdf