iPS細胞の将来展開とMUSE細胞の応用
<クマ:自分の生い立ちを調べているクマムシ>
<Koby:一緒に調査している科学オタク>
Koby:バイオジャパン2013に参加して、iPS細胞などの今後の展開について考察した。
詳細は下の表にまとめたが、iPS細胞を再生医療に用いる場合には、目的とする細胞に分化誘導し、さらに腫瘍化の危険を持つ未分化な細胞を除去するという2つの要件が前提となり、ハードルは高い。
しかし、薬の効果判定用や、未病医療への応用(たとえばアルツハイマーの予防などに、各人のiPS細胞を経済的に樹立できれば、多大な効果が期待できる)などが現実的な応用方法であろう。
また、再生医療については、東北大学 医学系研究科 出澤教授が、骨髄、皮膚、脂肪などに存在し、また様々な臓器の結合組織にも内在し、体中の様々なタイプの細胞に分化可能な、自己複製能も有する、新たなタイプの多能性幹細胞 Multilineage-differentiateing Stress Enduring (Muse)細胞を2011年に発見。
多能性を備えながら腫瘍性が無いので再生医療への応用が期待されているが、Muse細胞の持つ最大の利点は、誘導もせずそのまま血中に投与するだけで組織修復をもたらし、採取してきて体内に投与すれば障害部位を認識し、そこに生着して組織に応じた細胞に自発的に分化する。
さらにMuse細胞の母集団となる間葉系幹細胞は現在世界中で数多くの臨床試験が展開されており安全性が担保されており、再生医療への現実的な応用が可能とのこと。
今後の展開が多いに期待できる。
表1 iPS細胞の展開予想
項目 | 講演者ソース | 重要ポイント |
至近のビジネス・ターゲット | 経産省・生物化学産業課・江崎課長 | 1.医療機関でしか行えなかった一部の細胞培養等の行為が外部委託可能となりビジネス展開へつながること。2.iPS細胞による足元のビジネス効果は、機器の発注よりも消耗品(シャーレ、培養地、試験細胞、等)の方が大きい。 |
再生医療への応用 | 京都大学 物質細胞統合システム拠点・中辻教授 | iPS細胞を再生医療に用いる場合には、目的とする細胞に分化誘導し、さらに腫瘍化の危険を持つ未分化な細胞を除去するという2つの要件が前提となり、ハードルは高い。 |
未病医療への応用 | 慶応義塾大学医学部 岡野教授 | アルツハイマーの予防などに、各人のiPS細胞を経済的に樹立できれば、多大な効果が期待できる。実験室では、アルツハイマー患者から樹立されたiPS細胞から健全な細胞と識別可能な(たとえばβアミロイド生成能力差など)が検証されつつある。また、アルツハイマーが予想される人への効果的な治療も開発中である。 |
表2 NEDO公開シンポジウムから
講演者 | タイトル | 重要ポイント |
経産省・生物化学産業課・江崎課長 | 基調講演(バイオ関連の政策とターゲット) | 1.医療機関でしか行えなかった一部の細胞培養等の行為が外部委託可能となりビジネス展開へつながること。2.iPS細胞による足元のビジネス効果は、機器の発注よりも消耗品(シャーレ、培養地、試験細胞、等)の方が大きい。 |
京都大学 物質細胞統合システム拠点・中辻教授 | 多能性幹細胞株の実用化に必要な技術開発 | iPS細胞の増殖過程においては、増殖力の強い(腫瘍形成の可能性が強い)細胞が、生存競争の中で勝ち抜くように、育つ傾向がある。したがって、これらの細胞の識別が重要となる。 |
ニプロ梶@笹山主席研究員 | ヒト多能性幹細胞の大量培養技術開発 | iPS細胞として樹立された細胞株の大量培養技術は着々と進んでいる。エレベータに乗るくらいのサイズで、一基2〜3千万円程度で販売を目標。 |
東北大学 医学系研究科 出澤教授 | 多能性幹細胞(MUSE細胞)の可能性 | 骨髄、皮膚、脂肪などに存在し、また様々な臓器の結合組織にも内在し、体中の様々なタイプの細胞に分化可能な、自己複製能も有する、新たなタイプの多能性幹細胞 Multilineage-differentiateing Stress Enduring (Muse)細胞を発見。多能性を備えながら腫瘍性が無いので再生医療への応用が期待されているが、Muse細胞の持つ最大の利点は、誘導もせずそのまま血中に投与するだけで組織修復をもたらすこと。iPS細胞を再生医療に用いる場合には、目的とする細胞に分化誘導し、さらに腫瘍化の危険を持つ未分化な細胞を除去するという2つの要件が前提となる。しかしMuse細胞の場合、採取してきて体内に投与すれば障害部位を認識し、そこに生着して組織に応じた細胞に自発的に分化する。さらにMuse細胞の母集団となる間葉系幹細胞は現在世界中で数多くの臨床試験が展開されており安全性が担保されており、再生医療への現実的な応用が可能。 |
参考文献
NEDO公開シンポジウム
http://www.nedo.go.jp/content/100537360.pdf
新たなタイプの多能性幹細胞 Multilineage-differentiateing Stress Enduring (Muse)細胞を発見
http://www.stemcells.med.tohoku.ac.jp/outline/index.html
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