光合成と放射線

 

<光合成と放射線>

クマ:植物の光合成と放射線って、いったいどういうことなの?

Koby:実は、調査のなかで、実におもしろいことが分かってきたんだ。
つまり、約32億年前に「ひかり」のエネルギーを生命として利用できる初めてのプロセス「光合成」がシアノバクテリアによってつくられ、いまの植物の基礎となっているのは、聞いたことがあるかもしれない。


クマ:なんとなく。

Koby:まぁ、いい。初回のクマ・シリーズ「太陽と放射線」の調査結果でわかったことに、光合成に使われる「ひかり」は電磁波の一種で、この電磁波の仲間には、ガンマ線や紫外線や電波などがあるというのがあったな。

クマ:そうそう、太陽はいろんな放射線を強烈に噴射してるんだった。

Koby:そして、第2回の「放射線があったたらどうなるの」で、弱いガンマ線が当たると、活性酸素が発生することも勉強したよな。

クマ:細胞のミトコンドリアの活動でも活性酸素が発生して、奥深い話だったな。

Koby:今回の調査の目玉は、植物に関する活性酸素対策なんだ。

クマ:なるほど。と、いうことは、光合成プロセスと活性酸素のつながりとか。

Koby:たまには、するどいこと言うな。

クマ:学習効果で〜す。

Koby:さて、光合成のしくみを簡単におさらいすると、「ひかりのエネルギーで、二酸化炭素と水から、酸素と有機物(化学エネルギー)をつくるプロセス」だよね。

クマ:人間の小中学校の教科書に、のってるよ。

Koby:そうだね。
そこで、この光合成プロセスを、電磁波の仲間のガンマ線が当たった時の反応と、かさねてみると、「ひかりのエネルギーが、植物の葉緑体のもと、水分子を活性化させ、活性酸素のエネルギーから、二酸化炭素を材料に有機物をつくりだすプロセス」に他ならないんだ。

クマ:なるほど。

Koby:植物でも、発生する活性酸素は、大変反応性がたかく、上手に扱わないと、大変なことになってしまう。
また、植物の場合は、光合成という、常時、活性酸素を発生するプロセスがエネルギー源そのものなので、動物以上に活性酸素をコントロールするしくみを発達させる必要があったんだ。
そのため、植物は、光合成プロセスを完成させるために、種々の抗酸化物質を、体内につくることができるようになったんだ。

クマ:なるほど。だから、人間なんかは、植物由来の抗酸化物質、たとえばビタミンCなんかが必要なんだ。

Koby:水溶性のビタミンC、脂溶性のカロチノイドやフラボノイドなどの植物色素は、重要な抗酸化物質で、光合成の研究と合わせて、今も研究が進められている最中なんだ。

ビタミンC (アスコルビン酸)はご存じのとおり、果物・野菜に多く、
ビタミンE (トコフェロール、トコトリエノール)は、植物油に、
またポリフェノール (レスベラトロール、フラボノイド)は、茶、コーヒー、豆、果物、オリーブオイル、チョコレート、シナモン、オレガノ、赤ワインなどに、
カロテノイド (リコペン、カロテン、ルテイン)は、果物、野菜、卵に多く含まれるので、
バランスの良い食事と、サプリメントなどでの摂取も有効のようだ。

クマ:野菜と果物は、いっぱい食べなくっちゃ。

Koby:そうだな、だが、食べすぎは、いかんぞ。

クマ:リョウカイ。





<参考資料>

重岡成、石川孝博、武田徹「光合成生物における光・酸素毒防御系の分子機構--光・酸素毒耐性植物の創製は可能か」、『蛋白質核酸酵素』第43巻第5号、共立出版、 634-648頁、 NAID 40002332952

Laboratory of Plant Physiology, Waseda University 光合成色素   http://www.photosynthesis.jp/shikiso.html