セシウムと拡散防止

 

<クマ:自分の生い立ちを調べているクマムシ>

<Koby:一緒に調査している科学オタク>

<セシウムとは>

クマ:だいぶん放射線のことについて、わかってきたけど、肝心のセシウムのことは、いまひとつ理解できていないような気がするんだけど。

Koby:クマが、どれだけセシウムのことを知っているかは、ちょっと分からないけど、これまた、調査結果をもとに分かりやすく説明してみるか。

クマ:ソウ、コナクッチャ。

Koby:さて、放射線がなぜ、発生するかは、「太陽と放射線」のところで、分かってもらえたと思うけど、簡単におさらいしてみよう。

クマ:え〜と。まず全ての物質は、原子という粒々から成り立っていて、この原子の粒々が、実はまた細かな陽子、中性子という粒々状の原子核とその周りを取り巻く雲状の電子で出来ているんだ。

Koby:えらい!。

クマ:頑丈な原子核も壊したり、くっつけたりできて、その時に発生する、エネルギーが放射線だったような・・・。

Koby:その通り。自信をもって、ちゃんと説明できるようになってくれよ。

クマ:ラジャー。そして、この原子核も壊したり、くっつけたりできる場所は、太陽や宇宙の星々と、原子力発電所と核爆弾で、新たにものすごいエネルギーをつくることができる。

Koby:そうだったな。さて、本題にもどって、セシウムの場合は、原子力発電所と核爆弾由来となるんだが。

クマ:ナゼ。

Koby:太陽の場合は、核融合で、セシウムのような原子番号の大きい元素はできないんだ。
原子力発電所と核爆弾は、核分裂の最初の材料として、おもにウランをつかうんだが、これが割れたときにすごいエネルギーがでる。
割れ方については、きちんとした法則みたいなものはなく、まず、2つの「核分裂生成物(放射性物質)」になるんだが、いつも同じ物質が生成されるわけではなく、出てくる物質の可能性はなんと1000種以上もあるんだ。
すなわち、核分裂で生成する物質がセシウムだけとはかぎらず、いろんな元素が生成されるんだ。
ところが、セシウム、ヨウ素、ストロンチウム、ジルコニウムなどの生成物質を除くと寿命が30分とか非常に短く、すぐに無害な元素になるんだ。

クマ:へぇー。

Koby:ということで、セシウム、ヨウ素、ストロンチウム、ジルコニウムなどの寿命の長い元素が、残るということなんだ。
また、ジルコニウムは揮発しにくいので、セシウム、ヨウ素、ストロンチウムに絞ることができるというわけだ。
また、ヨウ素の半減期も約8日なので、最終的に、問題となるのは、セシウム137(半減期30年)、セシウム134(半減期2年)ストロンチウム90(半減期29年)となる。ストロンチウムは、生成量がすくないので、一番影響が多きいのが、セシウムとなるんだ。

クマ:なんとなく、わかったけど、やっぱりややこしいな。

Koby:!?。さて、セシウムの性質はと。

クマ:わかりやすく、お願いします。

Koby:セシウムの化学的性質と体内摂取後の挙動は、生物にとって重要な元素であるカリウムと似ているんだ。
元素の周期律表でみてもわかるように、セシウムとカリウムは、同じ第1族元素でアルカリ金属に属するんだ。
このように化学的性質が非常に似通っているので、体内の取り込まれた場合も、セシウムとカリウムはよく似た部分(筋肉などの組織など)に蓄積することが知られてる。
したがって、セシウムによる内部被爆も、従来からさらされてきたカリウムからの内部被爆対策が有効と考えることができるんだ。

クマ:カリウムは体にとって重要なものと、いろいろ話題になっているけど、セシウムは、カリウムと性質は良く似ているんだね。

Koby:動植物にとって必要不可欠な元素であるカリウムなんだが、天然カリウム中に0.0117 %の割合でカリウム40という放射性カリウムが存在するんだ。食品中に含まれるカリウム40の濃度はかなり高く、白米1kg中の放射能強度は33ベクレル(Bq)ほどになるそうだ。
また、人体が持つ放射線強度は、体重60kgの成人男子で約4000ベクレルくらいだそうだ。

クマ:そうなんだ。これが、自然放射能とよばれているものなのね。



Koby:さて、次に日本中に広がった放射性セシウムの処理について考えてみよう。

<拡散を防止するために>

Koby:いま、東日本大震災で発生したガレキ処理が進められているね。

クマ:なかなか、処理が進まず困っている話をよく聞くことがあるよ。ガレキを置いてある場所では、本当に大変心配されているので、なんとかしてあげたいと思うな。

Koby:そうだね。また、震災ガレキにも、放射性セシウムが付着している恐れがあるので、そのまま何もせずに置いておくと、セシウムが雨水とか風に乗って広がっていく可能性もあるんだ。だから、できるだけ早く処理をする必要もあるんだ。

クマ:何かいい手はないの?

Koby:いま、震災ガレキ処理については、環境省から広域処理の方法について詳しい方法が示されているんだ。簡単に説明すると、ガレキの放射性セシウムの放射線量をしらべて、240〜480ベクレル/kg以下の低い放射線のものを、他地区の、焼却炉や処分場で処理をすすめようというものなんだ。

クマ:低いといっても、そとで処理したらセシウムは、どうなるの。

Koby:そうだね、肝心なとこだね。この対策についても詳しく説明されているので、わかりやすく解説するとこういうことなんだ。 まず、焼却炉については、いまでも焼却処理で発生する主灰、飛灰、排ガスの「ばいじん」については、ダイオキシン対策で厳しい基準があり、主灰、飛灰は飛散防止対策が徹底されているんだ。また、飛灰のうち排ガスに含まれる細かなものは、バグフィルターなどの集塵装置の設置が義務付けられていて、徹底的に除去されるしくみになっているんだ。

クマ:ふうーん。ところで、セシウムはどこに行くの。

Koby:セシウムは、焼却処理で発生する主灰、飛灰、排ガスの「ばいじん」に含まれることになる。つまり、焼却時に一度気体になったセシウムは、その後ダイオキシン対策で実施されている急速冷却(200℃以下)過程で凝集し「飛灰」に付着するんだ。

クマ:ということは、主灰、飛灰、排ガスの「ばいじん」をおさえれば、セシウムの飛散防止対策になるんだね。

Koby:その通り。その結果、排ガスは徹底的に洗浄され空気中に放出される。空気中に放出される排ガスについても、厳しい「ばいじん」濃度規制値があり、「ばいじん」濃度が連続監視されているんだ。 焼却能力が4t/hr以上の焼却炉では「ばいじん」濃度規制値は、0.04g/Nm3で、「ばいじん」の放射性セシウムが8,000ベクレル/kgの場合は、排ガス中の放射性セシウムは0.32ベクレル/Nm3以下となり、排ガス線量限度(Cs137:30Bq/m3,Cs134:20Bq/m3)の1/100程度になっているんだ。実際には規制値を超えないように低く管理するので、約1/10の排ガス放射性セシウム0.037ベクレル/Nm3では、0.0000000011 mSv/年(外部被曝),0.00000074 mSv/年(内部被曝)と計算され、放射線の線量限度1mSv/年の10万分の1以下の値と計算されている。

クマ:すごい数字が、いっぱい出てきたけど、洗浄された排ガスの「ばいじん」が規制値以下なら、外部被曝・内部被曝は、ものすごく低いということなのね。

Koby:まぁ、ざくっと言うとそういうことだ。100%完璧にバグフィルターで除去できればパーフェクトだが、排ガスの「ばいじん」が規制値以下なら、放射性セシウム影響はものすごく低いということだ。

クマ:ダイオキシン対策で、焼却炉の規制が厳しくなっていてよかったな。

Koby:さて、焼却処理でセシウムは、主灰と飛灰へ移るので、それを拡散しないようにすれば、いいことが分かる。 それを行うのが、処分場埋立だ。

クマ:ただ、単に埋め立てるだけ?

Koby:いや、違う。処分場も厳しい管理基準があるが、それ以上に、セシウムについては、外に漏れないように処分場のなかで土壌や粘土に吸着させてやろうと計画されている。また、セシウムの吸着効果の高いゼオライトも使う試みが考えられてきている。

クマ:ゼオライトの話は、福島原発の廃水処理で有名になったね。

Koby:管理を徹底して、放射線をモニターして、拡散防止を図ることが重要だ。

クマ:良く、わかりました。





参考資料

放射能ミニ知識、原子力資料情報室(CNIC) http://cnic.jp/modules/radioactivity/index.php/13.html

核分裂でできた物質の片割れはどこに?(日本科学未来館) www.miraikan.jst.go.jp/linkage/qa/i/110420166203.html

ウイキペディア ja.wikipedia.org/wiki/カリウム40

環境省 広域処理情報サイト http://kouikishori.env.go.jp/material/

放射性物質の挙動からみた適正な廃棄処理分(技術資料)
平成23年12月2日第一版 国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター env.go.jp/jishin/attach/haikihyouka_kentokai/10-mat_3.pdf