各国の環境法とリスクコミュニケーション

<クマ:自分の生い立ちを調べているクマムシ>

<Koby:一緒に調査している科学オタク>



Koby:リスクコミニケーションを考えるに当たって、各国の環境法の排出規制と、それを守らせる仕組みは切ってもきれない関係にある。

クマ:確かに、そうだね。世界各国で、環境法はどう違うの。

Koby:各国の環境法はそれぞれ複雑で、Koby先生も現在勉強中じゃが、現在進行形ということで、理解できているところまでの解説をしてみよう。 
下の表1に比較を示すが、まず各国での大気排出基準の厳格さが違う。
 過去の公害問題を解決した先進国は厳格だが、現在発展途上の国々では、一般的に緩慢な基準となっている。
 また、公害問題を解決した国々でも、排出基準を守る(守らせる)仕組みは、それぞれ違う。
 日本の場合は、環境法の排出基準に直罰規定があり、排出基準が違反した場合は、法により罰せられ、企業活動に多大な影響がでるようになっている。
 アメリカの場合は、排出基準が超過した場合は、超過の程度に応じて、超過金を支払うか、前もって排出権取引で、排出枠を得て対応するスタイルで、超過したからといって企業活動に大きな支障は発生しない。
EUでは、直罰はないが、行政訴訟として裁判所判断となり、その対応を誤ると、企業にとり致命的となる。



表1  各国の排出規制比較
排出規制日本(京浜臨海)米国EU(独)韓国中国
規制値厳格(上乗せ有)厳格厳格緩慢緩慢
直罰有りなしなしなしなし
違反時処罰(企業活動に支障)違反金支払い(企業活動支障なし)訴訟(伊:Ilva製鉄所停止問題)米国に準じる米国に準じる
大気環境レベル×


Koby:それぞれの長所短所はあるが、日本の方式は日本人の気質とあいまって、企業にとって排出基準を守ることは、最も大切なCSR対応と位置付けれれている。
 従って、排出基準の改善(低下)にともない、着実に大気環境が改善する。
 また日本の場合、排出基準を設定するときは、技術と税の工夫を実施した。
 すなわち、対策設備を導入する場合に税制上の優遇措置が適用さ、技術開発では、排ガスから硫黄分を取り除く排煙脱硫設備等の企業研究を国が支援し、国の工業技術院も関与した。
 公的金融である日本開発銀行からの低金利の特別融資も行われた。
 したがって、EUやアメリカと比較しても、その達成度は高い。

 ここまで説明すれば分かるように、一見環境先進国であるヨーロッパ、特にドイツと比較しても遜色ないばかりか、反対に日本の環境を守る仕組みが優位であり得る場合もあるのである。

 NASAの人口衛星のPM2.5の調査結果を、下に示すが、ヨーロッパと日本を比較しても、その優位性は顕著であることが分かる。

 このような環境を守る素晴らしい仕組みのなかで、発達させてきた工業地域は、まさに日本の宝であることに間違いない。世界的な視野からも、現在日本に存続している製鉄所を始めとする工業地帯は、未来へ存続する義務のある、価値ある工業地帯なのである。

 こういう本当のリスクコミュニケーションを行うことが重要だ。




SO2排出抑制の各国比較 SO2 comparison

NASA人工衛星によるPM2.5の調査結果 PM2.5-map1


参考文献

New Map Offers a Global View of Health-Sapping Air Pollution
http://www.nasa.gov/topics/earth/features/health-sapping.html