スキンケアのリスクコミュニケーション

<クマ:自分の生い立ちを調べているクマムシ>

<Koby:一緒に調査している科学オタク>



Koby:ヒトの皮膚に住むいろいろな細菌については、腸内細菌のように有益なものもいるらしく、調査開始した。

クマ:おもしろそう。

Koby:皮膚に棲む皮膚常在菌は、私たちの皮脂や汗をエサに暮らしている。
種類や量は人それぞれに異なるが、約1兆個、10種類程度がいると言われている。
この中で善玉菌と呼ばれる菌には表皮ブドウ球菌があり、同じブドウ球菌という名前をもつ黄色(おうしょく)ブドウ球菌は悪玉菌の一種である。
同じブドウ球菌という名前を持ち菌の形は似ているが、黄色ブドウ球菌は病原性を持ち、子どもに多い皮膚病・とびひの原因菌である。
しかし、皮膚にいるだけでは特に問題はなく、傷口についたり皮膚の菌バランスが崩れると悪玉としての本領を発揮する。
皮膚常在菌のバランスがとれていれば、多少のカビや病原菌が付着しても肌トラブルには至らないんじゃ。
弱酸性の環境が棲みやすい表皮ブドウ球菌は、自分の住処である肌を弱酸性に保つ働きもしているんじゃ。
善玉菌の表皮ブドウ球菌が皮膚を酸性に保つことは、アルカリを好む黄色ブドウ球菌やカビなどの悪玉菌の繁殖を防いだり、皮膚内部に侵入しないように、皮膚のバリアの役目を果たしている。
肌の菌を気にするあまり皮膚を洗いすぎると、表皮ブドウ球菌が減少し、肌がアルカリ側に傾き、アルカリ性を好む黄色ブドウ球菌が増殖し、結果、肌トラブルを起こすことにつながるそうじゃ。

クマ:ヘェ〜。

Koby:また、アトピー性皮膚炎の患者が汗によってかゆみなどのアレルギー反応を起こすのは、健康な人の皮膚にも存在するカビ(マラセチア属真菌)が出すタンパク質(MGL_1304)が汗に溶けて皮膚から体内に入り込むことが原因と最近発表された。
このタンパク質を効率的に吸収または不活性化する製品を作ることで、アトピー性皮膚炎の新たな治療やスキンケア方法の開発に役立つことが期待されている。

クマ:これまた、びっくりデス!!



表1  皮膚常在菌の有益性と有害性
皮膚常在菌有益性/有害性
表皮ブドウ球菌健康な皮膚では、この細菌がほとんどを占める「常在菌」。腸内細菌のビフィズス菌のような「皮膚善玉菌」である。健康な皮脂膜が大好きで、皮膚がしっとりとつややかであるなら、この菌群が元気に暮らしいている証拠。表皮ブドウ球菌は、皮脂や汗をエサとし食べて、弱酸性の脂肪酸を産生し、皮脂から排出される脂肪酸(表皮ブドウ球菌はよい香りを作る脂肪酸を産生)とともに、皮膚面を酸性に保っている。善玉菌の表皮ブドウ球菌が皮膚を酸性に保つことは、アルカリを好む黄色ブドウ球菌やカビなどの悪玉菌の繁殖を防いだり、皮膚内部に侵入しないように、皮膚のバリアの役目を果たしている。
黄色ブドウ球菌黄色ブドウ球菌は人体の皮膚表面、毛孔に存在する。黄色ブドウ球菌は、悪臭の脂肪酸や、アンモニアやインドール等の不快臭をつくりだし、腸内細菌のウエルシュ菌のような「皮膚悪玉菌」である。ヒトの皮膚に常在するブドウ球菌の中では毒性が高く、健常者に対しても病気を起こしうる。ただし黄色ブドウ球菌も、健常者では通常の生育場所である皮膚表面や鼻腔などでの増殖自体が発病につながることは少なく、創傷部などから体内に侵入した場合に発病することが多い。
マラセチア属真菌アトピー性皮膚炎の患者が汗によってかゆみなどのアレルギー反応を起こすのは、健康な人の皮膚にも存在するカビ(マラセチア属真菌)が出すタンパク質(MGL_1304)が汗に溶けて皮膚から体内に入り込むことが原因。



参考文献

常在菌ってなんだろう ロート 女性のための生活情報便 vol.1,09.2008
http://www.rohto.co.jp/comp/news/pdf/w_lab_vol01.pdf


Fungal protein MGL_1304 in sweat is an allergen for atopic dermatitis patients 広島大学
http://news.mynavi.jp/news/2013/06/10/137/index.html