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PM2.5のリスクコミュニケーション<クマ:自分の生い立ちを調べているクマムシ>
Koby:ちまたでは、花粉飛散とあいまって、中国からのPM2.5や黄砂の影響が心配され、大変なことになっておるようじゃ。PM2.5は、ここ数年来、窒素酸化物の環境影響の次のターゲット物質として、WHO(世界保健機関:World Health Organization)でもいろいろ議論されている。なかなか分かりにくいものなので、健康へのリスクについて、解説しよう。 クマ:ちょうど、知りたったんだ。分かりやすく説明してね。 Koby:それでは、まずPM2.5とは何かということについて。 PMとは、粒子状物質(Particulate Matter, PM)のことで、大気に漂う固体や液体の微粒子のことなんだ。 主に燃焼による煤塵、黄砂のような飛散土壌、海塩粒子、工場や建設現場で生じる粉塵等などからなる。PM2.5とは、その平均粒径が2.5μmであることを意味する。 では2.5μmとはどのぐらいの大きさなのだろうか。 アサガオ花粉 100μm 細かい砂 90μm 髪の毛の太さ 70μm スギ花粉 20μm ディーゼル粒子大 10μm ディーゼル粒子小 2μm 黄砂の砂 5〜0.5μm 霧の水滴 1μ以下 タバコの煙 0.5μm以下 体内での挙動とサイズによる違いじゃが、簡単にいえば、呼吸器に沈着する。 上気道、下気道、肺胞など部位によって違うが、ざっとした結論では、1μ以下は沈着しにくく、また、10μを超すと肺には沈着しにくいので、2.5μ前後の粒子(PM2.5)が問題となる。 さて、その健康影響については、下の表1に他の物質、放射線の健康リスクと比較して示した。 化学物質や放射線は、対象物質の特性が明確に分かるが、PM2.5の場合は、種々の物質からの複合物なので、対象物質の特性を明確に定義することがむずかしい。 そのため、健康影響調査についても、化学物質のような動物実験の調査手法では、明確な影響を調べることが困難となる。 このため、コホート調査(特定の要因に曝露した集団と曝露していない集団を一定期間追跡し、研究対象となる疾病の発生率を比較するもの)で、比較調査されることが多い。 コホート調査も、狙いとするPM2.5以外の莫大な数の影響因子があるので、そこをどこまで数学的に補正することができるかがポイントとなる。
Koby:上述のような、難しさとバラツキ要因を持って、WHO(世界保健機関)が、制定したガイドラインが、表2と表3じゃ。 日本の環境基準値は、「1年平均値が15μg/m3以下、1日平均値が35μg/m3以下」になっているが、WHOのガイドラインと比較すると、WHOガイドライン(年間)の目標値3のレベルとなっており、この基準は、米国とも現時点で同じである。 また、日間では、WHOの目標値1となるが、「環境基準値というものは、ヒト健康を適切に守るために維持されることが望ましい基準」で、疫学的な知見でも、短期的な影響はよくわからないので、1日平均値が35μg/m3を超すかどうかよりも、1年平均値を重視すべきであろう。 PM2.5の健康影響はメカニズム的には説明できるが、そのリスク(確立的影響度)は、まだまだバラツキのあるものと考えるべきであろう。 個人的な防御策はほぼ無意味のようで、すなわち、PM2.5は、普通のマスクでは止まらない。室内濃度も室外濃度とそれほど変わらないので、室内が安心ということではない。 気にすればするほどストレスが溜まって免疫力が低下するので、逆効果だと思われる。空気が綺麗な日に、外部で充分活動をして、良い空気を楽しむということでストレス解消を狙うのが良いのかもしれない。
Koby:WHO(世界保健機関)が制定したガイドライン中の死亡リスクと、いろいろなガン化のリスクを比較してみよう。 毎日の約2合の飲酒の場合が、ガン化リスクを30%から50%増加させる。 また、肥満・運動不足では10%から30%の増加のレベルとなる。PM2.5で、日本の環境基準(年間平均値)の場合、WHOのガイドラインではベースから約3%の増加となる。 これを、低いと考えるか、高いと考えるかは個人の判断であるが、Kobyの場合は、環境基準の2倍(年平均で35μg/m3)で、肥満・運動不足と同レベルくらいかと理解し、時間値で10μmg/m3以下の空気が澄んだ日には気持ちよく運動して免疫力アップをはかり、健康増強したいと思っている今日この頃である。 参考文献 WHOにおける微小粒子状物質のリスク評価に関する手法について 環境省 http://www.env.go.jp/council/07air/y077-02/mat01_1.pdf
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