一酸化炭素(CO)一酸化窒素(NO)のリスクコミュニケーション

<クマ:自分の生い立ちを調べているクマムシ>

<Koby:一緒に調査している科学オタク>



Koby:有毒ガスでも、ヒトの体にとってごく少量(適量)は有益なものになっているらしく、調査開始した。

クマ:おもしろそう。

Koby:まず一酸化窒素について。ご存じのように、一酸化窒素(NO)は有害な大気汚染物質である。
発生源の大部分は人為的理由で、ボイラー、自動車の排出ガス、焼却炉、石油ストーブなどである。
大気へ放出された一酸化窒素は、二酸化窒素に酸化され、二酸化窒素は紫外線を受け、オゾンなど酸化物質(オキシダント)を生成する。
二酸化窒素 (NO2) 自体は中性で肺から吸収されやすい赤褐色の気体または液体で、細胞内では二酸化窒素は強い酸化作用を示して細胞を傷害するので、粘膜の刺激、気管支炎、肺水腫などの原因となる。

ところが、一酸化窒素(NO)について1980年代頃から、その生体内での生理機能について研究が進み、血管拡張作用を持つことなどが明らかにされたほか、この一酸化窒素が神経伝達物質としても作用することが判明した。
なお、1998年のノーベル医学生理学賞は、この一酸化窒素の生理作用の発見に対して贈られている。現在でも、その多様な生理機能について研究が続いている。(表1)。
よく映画で、心臓病の発作を鎮める薬として登場するニトロ(ニトログリセリン)も結果的に体のなかで、ニトログリセリンがNOに変化することによりんじゃ。

クマ:ヘェ〜。

Koby:また、猛毒の一酸化炭素じゃが、脳梗塞などのピンチの時に、脳の血管はCOの急激な減少(急激な酸素の供給低下)をシグナルに、血管拡張性やエネルギー産生を調節(ピンチになった時に効果的に血流を増加させたり、エネルギーを産生したりする)する。

クマ:これまた、びっくりデス!!



表1  NO,COの有益性と有害性
ガス種類有益性有害性
一酸化窒素(NO)血管内皮細胞から適量(少量)産生され、血管拡張作用(降圧作用)があり、安静時脳血流量維持や自動調節に重要な役割を持っている。ニトログリセリン、亜硝酸アミル、一硝酸イソソルビド(5-ISMN,アイトロールR)などの亜硝酸誘導体が心臓病の治療に用いられる。高温で窒素と酸素が化合して一酸化窒素が生成する。発生源の大部分は人為的理由で、ボイラー、自動車の排出ガス、焼却炉、石油ストーブなどである。大気へ放出された一酸化窒素は、二酸化窒素に酸化され、二酸化窒素は紫外線を受け、オゾンなど酸化物質(オキシダント)を生成する。NO2の環境基準:1時間値の1日平均値が0.04ppmから0.06ppmまでのゾーン内またはそれ以下であること。
一酸化炭素(CO)脳神経は数分の虚血状態でも死に至る(脳梗塞などの低酸素状態)が、脳がこのような緊急事態に対応するため、COの急激な減少(急激な酸素の供給低下)をシグナルに、血管拡張性やエネルギー産生を調節(ピンチになった時に効果的に血流を増加させたり、エネルギーを産生したりする)する。一酸化炭素は酸素の約250倍も赤血球中のヘモグロビンと結合しやすいので血液の酸素運搬能力が下がり、末梢で酸素分圧が極端に低下し中毒症状を起す。環境基準は「1時間値の1日平均値が 10 ppm 以下であり、かつ、8時間平均値が 20 ppm 以下であること」で、1時間の暴露では、500ppmで症状が現れはじめ、1000ppmでは顕著な症状、1500ppmで死に至る。



参考文献

脳血管作用メディエータ 脳循環代謝 16:229〜240,2004
http://www.cbfm.jp/journal2/contents/assets/016040229.pdf/


脳の低酸素状態の防御機構に生体ガス分子が関係 科学技術振興機構(JST),慶應義塾大学 医学部
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20120110/