分子言語とリスクコミュニケーション

<クマ:自分の生い立ちを調べているクマムシ>

<Koby:一緒に調査している科学オタク>



Koby:細胞間の情報伝達について、免疫学および発生生物学、植物毒学から全体感を比較すると面白いものが見えてくる。

クマ:いきなり、だけど。・・どうおもしろいの。

Koby:すなわち、細胞間の情報伝達は、おもに分子量がおおむね1万から数万程度のタンパク質が主要物質で、いわば分子言語ともいえるものだ。

免疫学および発生生物学、植物毒学は、それぞれの研究テーマの関係するところから、この分子言語の研究にとりかかった。

最初は、それぞれ全く別の機構で、それぞれの細胞間コミュニケーションが行われると考えていたのだが、研究が進むうちに、それそれで発見した物質やプロセスは、複雑に絡み合っていることが分かってきた(表1)。

一般に細胞の増殖、分化、死や細胞機能の発現、停止は周りの細胞により厳密に制御され、その結果、正常な発生や生体の恒常性が維持されている。

こうした細胞同士のコミュニケーションは、細胞表面分子を介する直接的な細胞同士の接触や可溶性分子を介して行われている。

この細胞間情報伝達分子が免疫学からは「サイトカイン」として、発生生物学からは、成長因子として研究されてきたが、成長因子とサイトカインという用語は今日しばしば同義語のように扱われるようになった。

サイトカインは造血系や免疫系での体液を介した細胞間情報伝達の実体として明らかにされたものであり、一方、成長因子は固形組織の研究から明らかにされたものである。

様々な細胞学的・生理学的過程の調節に働いており、標的細胞の表面の受容体タンパク質に特異的に結合することにより、細胞間の信号物質として働く。

iPS細胞の発明で、この分子言語は、ますます加速度的に解明されつつある。



表1  分子言語の研究のながれ
免疫研究から(サイトカイン)発生生物学から(成長因子)毒物研究から
関係点最初はリンパ球の増殖を誘導する情報伝達分子として発見。免疫システムの細胞から分泌されるタンパク質で、特定の細胞に情報伝達をするもでサイトカインと総称される。サイトカインの研究は、免疫系の制御因子として1980年代に急速に発展し、免疫系のみならず、生命現象のあらゆる場面に関与する展開となる。動物体内において、特定の細胞の増殖や分化を促進するタンパク質として種々の成長因子が発見される。サイトカインは造血系や免疫系での体液を介した細胞間情報伝達の実体として明らかにされたものであり、一方、成長因子は固形組織の研究から明らかにされたものである。植物の体内で生成された物質のうち動物にとって毒になるものが植物子孫繁栄のために利用される。大半が窒素を含むアルカリ性の分子で、神経ホルモンやサイトカインに構造が良く似ている。
代表的なものインターロイキン:白血球が分泌し免疫系の調節に機能する。現在30種以上が知られる。 細胞増殖因子:特定の細胞に対して増殖を促進する。上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、肝細胞成長因子(HGF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)などがある。神経ホルモンのアセチルコリンの働きを阻害するものは、猛毒性で、ナス科の植物に多く含まれる。チョウセンアサガオ(江戸時代:華岡青洲が麻酔薬として利用)やタバコのニコチンなど。
インターフェロン:ウイルス増殖阻止や細胞増殖抑制の機能を持ち、免疫系でも重要である。神経栄養因子:神経成長因子(NGF)など、神経細胞の成長を促進する。美しい花をつけるケシ(パパベル・ゾムニフェルム)のモルヒネは、鎮痛、鎮静に働き、脳内ホルモンであるドーパミン遊離を促進させ多幸感をもたらす。
細胞傷害因子:腫瘍壊死因子(TNF-α)やリンフォトキシン(TNF-β)など、細胞にアポトーシスを誘発する。リューマチの発症とも関係する。様々な細胞学的・生理学的過程の調節に働いており、標的細胞の表面の受容体タンパク質に特異的に結合することにより、細胞間の信号物質として働く。大麻のマリファナは、多幸感と陶酔作用が特に強くモルヒネ同様鎮痛効果もある。マリファナ状の脳内物質は、「アナンダミド」として1992年に同定される。



参考文献

http://ja.wikipedia.org/wiki/サイトカイン
http://ja.wikipedia.org/wiki/サイトカイン