放射能について

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 東日本大震災を契機に、放射能に関して非常に注目されています。TVや雑誌などでも、放射能とがん化について、たくさんの記事を目にすることができます。今まで、ほとんど考えたことのなかった放射能の情報が、どんどん新たに入ってきて、皆さんの心配度は増すばかりでしょう。

 

 放射能といえば、やはり一番の心配ごとは「がん」化です。放射線が細胞の中に入ると、特に遺伝子情報をつかさどっている染色体に存在するDNAを原子分子レベルで傷つけ、傷つけられたDNAを持つ細胞が「がん」化すると言われています。

 

 このがん化のしくみについては、種々の実験と調査で確認されているので、信頼しても問題ないと思います。

 問題は、がん細胞になった1個の細胞が、増殖して人体に悪影響をおよぼす、がん組織になるかどうかということです。がん細胞ができたとしてもがん組織にならなければ問題はありません。

 

 この問題を考える場合に重要になるのが人間の免疫です。人間の細胞は約60兆個あると言われていますが、細胞のがん化は非常に低い確率(約1,000個/日)で毎日発生しています。この毎日発生している「がん細胞」を退治しているのが免疫です。特に最近の研究では、免疫細胞の1種であるがT細胞が大きく関係していると言われています。

 

 がん化の原因は、放射能だけではなく、いろいろな化学物質であったり、また特定のウイルスであったり、細胞自体の経年劣化(老化)であったり、たくさん研究されています。すなわち、日常茶飯事的に発生するがん細胞を、人間の免疫システムが毎日退治しているのです。

 

 ここで、本題の戻って、放射能とがん化について考えてみましょう。放射線がDNAに当たるとDNAが傷つき、がん化するのですが、重要なポイントは免疫システムとのバランスでがん組織となり得るまでがん細胞が発生するか否かということです。

 

 現在、世界各国で決められている放射線の基準は、このバランスをもとに決められています。つまり、年間1ミリシーベルトの量の放射線なら、今までの膨大な調査結果から「がん」が発生する原因とはならないと言うことです。

 当然、個人差はあるので、強い放射線をあびてもがんにならない人も大勢いることでしょう。反対に免疫が弱っていて、がんになりやすい人もいるわけです。

 したがって、放射能だけを非常に神経質に心配しても、それがもとで発生するストレスが免疫を弱くすれば、全く意味がないということです。

 

 <免疫システムについて>

 がん化の原因物質についての研究は、膨大にありますが、がん細胞を退治(性格に言うとT細胞が捕食する)研究は、始まったばかりのようです。

 すなわち、がん細胞自体はもとは自己の細胞だったわけですから、免疫細胞が自己と非自己を何をもとに区別して攻撃するかがポイントとなりますが、この研究が大変に難しいことからです。

 がん細胞自体が、自己と非自己の中間の「自己もどき」的なものであることも理由の1つです。

 また、研究でその仕組みが判明しても人間の免疫システムをコントロールすること事態が至難のわざだと考えられていました。

 しかし、最近の腸内細菌(腸内細菌は人間の総細胞より約1.5倍多い100兆個もいる)の研究から、自己と非自己を識別する免疫T細胞(Treg細胞:免疫を抑制する,Th17細胞:免疫を活性化する)のバランスが免疫力自他をバランスさせてるらしいとのこです。

 もともと、原始的な細胞を考えた場合、他の細胞を食べることという基本的な生命活動が、すなわち免疫のもとなのですから、消化・吸収を担っている人間の腸が、免疫の舞台であるということは納得できそうです。

 

<自然放射能について>

 福島原発由来の放射能汚染で、静岡のお茶から500ベクレル/kg以上の放射能検出で出荷停止!というようなニュースが何回も聞かれます。また、飲料水の基準が100ベクレル/kg以下とも言われていますが、この値がどういうものか実感としてなかなか理解できません。

 そこで、いままで公開された自然放射能の測定値を以下示しますが、たぶんびっくりされます。

 1.ラドン温泉の素  304,000 ベクレル/kg

 2.ブレスレット・ネックレス(セラミック) 14〜80,000 ベクレル/kg

 3.衣料(繊維に練りこみ) 10,000 ベクレル/kg

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/housha/sonota/03102801.htm

詳細は、この文部科学省のHPに詳細に記載されています。

 また、お茶とか飲料水も基準は、あくまでも福島原発由来のヨウ素とセシウムしか判断基準に入っていませんが、自然放射能はカリウム40やウランやトリウムなどの放射能が主です。つまり、自然に存在する放射能元素すべての放射能(ベクレル/kg)を測定してみれば、もともと放射能はもっと高い値で従来から放射線を出していたということもわかるかもしれません。

 

<なぜセシウムだけなのか>

 一般的に原発では、ウランを燃料に使っています。このウランが分裂した時のエネルギーで発電しているのですが、分裂したときにできる元素が限られるからです。しかし、核分裂で生成する物質がセシウムだけとはかぎりません。ルビジウムなどという元素も生成されます。ところが、セシウム、ストロンチウム、ジルコニウムなどの生成物質を除くと寿命が30分とか非常に短く、すぐに無害な元素になるので、セシウム、ストロンチウムなどの寿命の長い元素を放射能もれの指標としているので、セシウムだけなのです(ヨウ素は半減期が約1週間と短い)。

<詳細は下記のHPが参考になります>

http://www.miraikan.jst.go.jp/linkage/qa/i/110420166203.html

 つまり、自然放射線は除外して福島原発由来の影響だけの基準をつくるためにセシウムに注目しいるということです。

 ここで重要なことは、セシウムだけでは基準としては有効だが、実際の住んでいる環境の放射線とはちょっと違うということです。

 住んでいる環境の放射線は、サーベイメーターというポータブル測定機で測定できます。最近、いろいろなところで測定されています。この、サーベイメーターは幸か不幸かセシウムだけの放射線を測るような芸当はできません。すべての(自然放射線を含む)放射線しか測れないので安心です。この結果が、各自治体のHPで公表され始めました。

 基準は、自然放射線(日本平均 0.17マイクロシーベルト/時=1.5ミリシーベルト/年)がベースで、それより+1ミリシーベルト/年(0.11マイクロシーベルト/時)を超えないこと、つまり両方足して0.28マイクロシーベルト/年を超えなければ一応基準内と考えることができるのではないでしょうか(世界平均の自然放射線は0.27マイクロシーベルト/時=2.4ミリシーベルト/年もある!)。